テレビCMなどで「リステリン」や「モンダミン」など、よく見かけます。メーカーとしては新たな習慣として定着させたいようですが、多くのマウスウォッシュには溶解剤としてアルコールが添加されています。アルコールは粘膜透過性やアセトアルデヒド産生に関する作用に加え、長期使用による上皮の剥離や潰瘍形成など、口腔に有害な影響を与える可能性も示されています。今日は「アルコール含有含嗽剤に関する口腔癌発生におけるアルコールの役割」という論文をかいつまんで紹介します。
疫学的に、ヘビースモーカーとアルコール大量摂取者では、全く喫煙暦や飲酒暦のない人に比べて約50倍、口腔癌発生の危険性が高いと考えられている。また、飲酒と喫煙の相互作用が発現することも明らかとなっている。
動物実験による研究ではアルコールと口腔癌との関連を示す根拠が十分にある。アルコールはタバコの発癌物質の口腔粘膜への透過を助長する事が繰り返し示されてきた。たとえば、15%アルコールに短時間さらされただけで、ヒトの腹側舌粘膜への発癌物質の透過性が増加することが示されている。さらにラットモデルにおいて、慢性的アルコール摂取による粘膜萎縮の発生が示され、粘膜上皮の発癌物質に対する感受性の増加が認められている。
2007年に行われた国際的、多施設における、3210人の頭頚部癌患者と2752人の対照者における研究では毎日のアルコール含有含嗽剤使用と口腔含発生との顕著な関連が示され、喫煙および他のアルコール摂取とは独立した頭頚部癌発生の有意な危険因子の一つである事が認められた。口腔および咽・喉頭部の癌に限ってみると、アルコール含有含嗽剤の1日2回の使用により癌発生の機会は現喫煙者では9倍以上、加えて飲酒習慣者では5倍以上、飲酒歴のない人では約5倍に増加した。
とのことで、この論文の結論としては「現在ではアルコール含有含嗽剤使用が口腔癌発生の増加、あるいは発生の一因となるという所説を受け入れるに十分な根拠がある。・・・アルコール含有含嗽剤と口腔癌発生との関連について現在入手可能な根拠に照らし合わせ、口腔保健ケアの専門家がアルコール含有含嗽剤の長期間にわたる使用を勧めるのは賢明ではないというのが著者らの意見である。」と締めくくっておりました。
というわけで、アルコール含有のマウスウォッシュは理由のある状況の場合に限った、期間限定使用とした方が良さそうですよ。以上!長いこと読んでくれてお疲れ様でした!!